生態系生態学ゼミとは

このゼミは、発表担当者が興味を持った生態系生態学に関する最新で重要な論文を紹介するものです。       

2021年度生態系生態学ゼミスケジュール

2022-01-12
第17回 澤田 佳美
論文タイトル:
The impacts of a logging road on the soil microbial communities, and carbon and nitrogen components in a Northern Zone Costa Rican forest
Eaton WD et al. (2021)
Applied Soil Ecology
伐採道の作設は、土壌を圧縮、肥沃な表層土壌や地上部の植生を消失させるため、森林生態系に大きなダメージを与えることが知られています。この論文では、こうした伐採道の作設が土壌微生物群集と土壌炭素・窒素の組成にどのように影響するのかを明らかにするため、コスタリカ北部の熱帯林において放棄後2年の伐採道を対象に、伐採道、林縁、近隣の原生林内の3つの環境でそれらの比較を行っています。私自身の研究に関連して、伐採活動による土壌養分の減少、また、その微生物への影響にも興味があったため、本論文を選びました。

2022-01-12
第16回 秦 倩凝
論文タイトル:
Different “metabolomic niches” of the highly diverse tree species of the French Guiana rainforests
Gargallo-Garriga et al. (2020)
Scientific Reports
熱帯降雨林における多様性の高い種組成に対する解析は、本研究室で多く行われています。しかし、種の概念を超えて、「メタボロミクス ニッチ」の視点から熱帯降雨林の植物多様性を理解するのはここで初めて知り、啓発的だと思いました。本研究はFrench Guianaでの熱帯林から採集した54種の植物の葉を分析して、種ごとにメタボロミクスプロファイルを作り、クラスター分析を行った。季節性がニッチの構成に寄与することと、熱帯降雨林でのニッチは種レベルで存在することを判明した。

2021-12-01
第15回 竹重 龍一
論文タイトル:
Why forest fails to recover after repeated wildfires in Amazonian floodplains? Experimental evidence on tree recruitment limitation
Flores & Holmgren (2021)
Journal of Ecology
アマゾンの氾濫原の森林において、繰り返しの山火事による回復力の低下という現象について、森林の更新に注目して調べた研究。Arrested succession についての論文を探していたが、伐採後の森林回復を対象とする自分の研究とプロットのサイズ感及び着眼点が共通していて、博士論文の執筆に役立ちそうだなと思ったから。

2021-12-01
第14回 青柳 亮太
論文タイトル:
Polyploidy: an evolutionary and ecological force in stressful times
Van de Peer et al. (2021)
The Plant Cell
倍数化は、植物(や他の生物分類群)の多様性を生み出すメカニズムとしてしられています。この論文では、倍数化が、(1)植物の生理特性や生物間相互作用を変えること、(2)ストレス環境への適応として重要であることを、豊富な事例から説明しています。近年いくつも倍数化に関する研究やレビューが出版されているのですが、Van de Peerさんの論文が進化史と関係させて倍数化を論じていて、魅力的だったので紹介したいと思います。

2021-11-17
第13回 姜 琳子
論文タイトル:
Human impacts on planetary boundaries amplified by Earth system interactions
Lade et al. (2020)
Nature Sustainability
Based on the "planetary boundary framework" and using the method of earth system dynamics, this article investigates and quantifies the interaction between earth system processes represented by planetary boundaries, determines the dense interaction network between planetary boundaries, and points out their impacts on sustainable governance. Although there are still many imperfections in the planetary boundary framework, this article is an extension of the original theory and a comprehensive understanding of the sustainable future.

2021-11-17
第12回 鳥羽 生真
論文タイトル:
Interacting elevational and latitudinal gradients determine bat diversity and distribution across the Neotropics
Bogoni et al. (2021)
Journal of Animal Ecology
この論文では、新熱帯区のコウモリの多様性に対して標高、緯度、植生の高さが与える影響を明らかにし、食事レベル、生息域、居住区の広さが粗いスケールのコウモリの分布を決定する最も重要な生態学的特徴であることを示している。動物の多様性への影響を評価している点が自分の研究と共通しており、説明変数の選択や分析の方法などが自分にとって参考になると考えたのでこの論文を紹介させていただきます。

2021-10-27
第11回 芝 里万杜
論文タイトル:
Increase in leaf organic acids to enhance adaptability of dominant plant species in karst habitats
Tang et al. (2021)
Ecology and Evolution
この論文では中国南東部のカルスト地形(石灰岩)と非カルスト地形(花崗岩)両方に分布する樹木18種で生葉の性質(比葉面積, 全炭素, 全窒素, 各栄養塩濃度, 水利用効率など)を測定し、その違いから樹木の石灰岩地への適応について論じています。石灰岩上の植生で栄養塩に着眼している点が自分の研究と似ていたのでこの論文を選びました。
2021-10-20
第10回 水上 知佳
論文タイトル:
Phosphorus deficiencies invoke optimal allocation of exoenzymes by ectomycorrhizas
Meeds et al. (2021)
The ISME Journal
この論文はカナダのバンクーバー島のリン可給性が異なる森林で、ベイマツEM菌根のリン獲得に関わる複数の酵素活性を測定し、土壌N.Pや葉のN.Pとの関係、リン可給性によるEM菌群集の変化について調べています。私の研究と似ている部分があり、樹木のリン獲得とEM菌の関係について興味があったので選びました。

2021-10-20
第9回 瀬木 晶帆
論文タイトル:
Upper canopy tree crown architecture and its implications for shade in cocoa agroforestry systems in the Western Region of Ghana
Asante et al. (2021)
Trees, Forests and People
この論文ではアグロフォレストリー(様々な樹木や草本、作物を植栽して行う農業のこと)という農法がとられているココアの栽培地を対象に、「どのような樹冠形状がアグロフォレストリーに最適か」を調べています。樹冠に関する形質に加えて、栽培に重要な日陰の面積や種多様性も扱っています。私は「樹形の研究が農業などに活用できる」という内容の論文が好きで、今回もそういった内容のものを選びました。
2021-07-07
第8回 上坂 亮祐
論文タイトル:
Taxonomic, phylogenetic and functional diversity of understorey plants respond differently to environmental conditions in European forest edges
Karen De Pauw et al. (2021)
Journal of Ecology
ヨーロッパの森林の林縁部において植物種の多様性について評価しています。この論文では、特に森林の下層植生に着目している点で、林縁部と森林内部という違いはあるものの、自身の研究に関連性を感じたため、また自身の扱っている地質以外にも光環境や微気候といった要素についても考察している点が興味深いと感じたため、紹介させていただきます。

2021-07-07
第7回 佐々木 祐太
論文タイトル:
Changes in land cover and ecological stress in Borneo based on remote sensing and an ecological footprint method
Jinfeng Yan et al. (2020)
Landscape and Ecological Engineering
この研究では、EVI植生指数データなどを解釈して、ボルネオのバラム川流域における植生タイプと強度特性の10年(2008年から2017年)の変動を評価しています。ボルネオ島全体をテーマにしてマクロ的に研究している論文はあまり見ないなぁと思ったのと、自分の研究内容に関連する衛星解析も出てくるので選ばさせていただきました。

2021-06-09
第6回 木子 雅水
論文タイトル:
What do tree-related microhabitats tell us about the abundance of forest-dwelling bats, birds, and insects?
Marco Basile et al.(2020)
Journal of Environmental Management
樹木の洞、立ち枯れ木、鳥類の巣など、樹木個体単位の微環境が、森林生昆虫、コウモリ、鳥類のアバンダンスにどのような影響を与えるのかについての論文です。あまり意識したことがなかった微環境も対象としている点、鳥類だけでなく、昆虫、コウモリと、比較的幅広い分類群を対象にしている点、多様な微環境ー動物間や動物間の関係性について論じている点が個人的に興味深いと感じたため、この論文を選択しました。

2021-06-02
第5回 澤田 佳美
論文タイトル:
Recovery of logged forest fragments in a human-modified tropical landscape during the 2015-16 El Nino
Nunes MH et al (2021)
Nature
この研究では、干ばつ期間における伐採後の熱帯二次林の回復を、航空機LiDARで得た林冠高の変化を用いて、広域的に評価しています。湿潤な熱帯では、エルニーニョによる干ばつは、樹木の枯死等に影響するのではないかと懸念されています。干ばつが起こった時、伐採によって構造や種組成が変えられてしまった二次林はどのような挙動を示すのでしょうか?このことは、今後の森林管理を考える上でも重要な情報だと考えられます。また、使用されている手法も航空機LiDARと、自分の研究では扱っていないものなので良い勉強になりました。テーマ、手法ともに大変興味深かったので、今回ご紹介させていただくことにしました。

2021-05-26
第4回 佐々木真優
論文タイトル:
A shift from phenol to silica-based leaf defences during long-term soil and ecosystem development
de Tombeur et al. (2021)
Ecology Letters
オーストラリア西海岸のJurian Bay Chronosequence において、植物の2種類の防御物質(ケイ素とフェノール性物質)が土壌年代に沿ってどのように変化するかを明らかにした論文。調査サイトには、窒素欠乏の若い土壌からリン欠乏の古い土壌まで、栄養塩濃度の異なる土壌が連続的に分布しており、クロノシーケンス(年代系列)手法を用いた研究が可能である。5つの土壌年代のサイトで植物の葉を採取し、ケイ素濃度とフェノール性物質濃度を調べた結果、若い土壌(窒素欠乏)ではフェノール性物質、古い土壌(リン欠乏)ではケイ素濃度がそれぞれ高く、両者はトレードオフの関係にあることが示された。とてもきれいで分かりやすい結果であったが、セミナーでは、いくつか解釈に注意が必要な点が指摘された。今回のサイトでは、厳密なクロノシーケンスになっていないのではないか(サイト間差は土壌年代以外の因子とも関係がありそう)、窒素欠乏環境下でのフェノール性物質の意義として、論文中で述べられていた説(余剰の光合成産物がフェノール性物質の生産にまわされる)が妥当なのかといった点について、議論があった。フェノール性物質は自身の研究にも関連があるが、ケイ素については初めて知ることが多く、リン獲得のために植物の根から出される有機酸がケイ素の吸収にも効いているという点は興味深かった。今回は2種類の防御物質のみが対象であったが、ほかの物質や物理的防御も考慮することで、土壌栄養が植物の防御に与える影響をより詳細に明らかにできると考えられる。

2021-05-19
第3回 秦 倩凝 
論文タイトル:
Soil properties explain tree growth and mortality, but not biomass, across phosphorus-depleted tropical forests
Soong et al. (2020)
Scientific Reports
本研究は、原生林であるアマゾン熱帯雨林の海岸から内陸まで12ヶ所の土壌サンプルを採集し、@土壌鉱物が土壌C・N・Pに与たる影響、A全リン、CN比と植生ダイナミックスの関係、B菌根菌と全リンの関係ついて調べた。結論としては、粘土質土壌がより高い土壌C・N・Pを持つことに加え、土壌Fe・Al酸化物の存在もC・N・Pの貯留量を上昇させる効果がある。しかし、土壌Fe・Al酸化物がPの可給性を低下させ、生態系の物質循環を抑えるため、そのような森林では菌根菌の働きは重要である。特に注意すべき点は、土壌鉱物による影響は地上部にも反映されるが、その指標はバイオマスではなく、植生のturnover rateであると考えられた。

2021-05-12
第2回 姜 琳子 
論文タイトル:
Plant community and soil properties drive arbuscular mycorrhizal fungal diversity: A case study in tropical forests
Zhang et al. (2021)
Soil Ecology Letters
This study mainly explained AMF diversity variation using the measured abiotic factors, combined with plant traits and microbe-related factors, to ascertain the most important drivers of AMF community assembly. In the analysis of result, a structural equation model was constructed to showed that the forest traits indirectly influenced AMF diversity via the plant community, soil properties and microbes. The construction of research ideas and simple and straightforward models can be used for reference.

2021-04-14
第1回 竹重 龍一 
論文タイトル:
Carbon declines along tropical forest edges correspond to heterogeneous effects on canopy structure and function
Ordway & Asner (2020)
PNAS.
自分を含め、当研究室の多くのメンバーが調査地としているボルネオ島マレーシアサバ州において、オイルパーム農園によるエッジ効果が森林生態系に与える影響を、航空機リモートセンシング技術を用いて調べた研究。伐採後の熱帯林の回復可能性を探る自分の研究上も重要な研究であるとともに、内容が社会的に重要なこと、加えて世界でもこのグループの人たちしかできないような非常にユニークな研究であるため紹介した。航空機LiDARとハイパースペクトルセンサーを用い、森林の地上部炭素貯留量と樹冠葉形質・樹冠構造を測定し、林縁からの距離との関係を基にエッジ効果が存在しているのか、存在しているとしたら、どのような生態学的メカニズムによってエッジ効果が起きているのかということを解析した。主要な結果として、エッジ効果による影響が最も大きかった地上部炭素量について特に議論されていた。エッジ効果によって林縁の炭素貯留は平均して22%減少し、エッジ効果自体は平均で林縁から114m持続していた。そのメカニズムとして、エッジが形成されると、樹冠高・LMA・葉P濃度・ギャップ構造が変化することによって地上部炭素量が変化するが、エッジ効果の強さや脆弱性については地形、さらには地形を形作る上での土壌の影響が考えられ、特定の土壌では特にエッジ効果によって地上部炭素が減少しやすい可能性があるこということが示されていた。また、エッジ効果は時間と共に増大する結果も示されたため、オイルパーム園と森林との間に植林地を設け、バッファーを設置することでエッジ効果を低減できるのではないかという提言もなされていた。セミナーでは、結果の見せ方という点で議論が起きた。生物学的な視点で、炭素貯留量がエッジの形成と共に減少するメカニズムを議論するためには、もう少しFig.S3の結果を深堀する必要があり、それを要約したFig.4が本文に入っているのは、専門外の読者への理解のしやすさを考え、論文のメッセージ性を強調するためなのかという意見だ。内容はもちろん、論文の構造の組み方や書き方を含めて、非常に参考になる論文だった。